肝胆膵外科

特色

肝胆膵がんに対する外科治療

  • 日本肝胆膵外科学会の肝胆膵高度技能専門医・修練施設Aに認定されています。高難度肝胆膵外科手術を年間50例以上施行し、高度技能専門医(髙橋医長)が常勤しています。
  • 消化器内科と連携しつつ、術前化学療法、術後化学療法を導入し、手術だけではなく、抗がん剤も含めた総合的治療を行っています。外来化学療法室を整備し、ご利用いただいています。
  • 院内でキャンサーボードを隔週で開催し、消化器内科、放射線科、病理部、その他がん治療に関わるものが集まりよりよい治療を検討しています。
  • 肝胆膵がんに対する腹腔鏡手術も積極的に導入し、保健適応術式の範囲内で腹腔鏡下肝切除、腹腔鏡下膵切除を施行しています。
  • 当院は全25診療科を有する総合病院であり、ハイリスク患者さんにも各診療科と連携しながら、適切に治療をおこなうことができます。

肝胆膵がん:疾患別治療方針

原発性肝癌

原発性肝癌には肝細胞癌と肝内胆管癌があります。肝細胞癌はB型肝炎、C型肝炎が原因のことが多いですが、近年肝炎ウィスルがない方の肝細胞癌が増えています。エコー、CT、MRI、腫瘍マーカー測定(AFP, PIVKA-2)などで診断します。治療方針は「肝癌診療ガイドライン」のアルゴリズムを参考に肝機能、腫瘍条件から切除適応、至適切除術式を決定します。肝癌は門脈を介して肝内転移を来すため、肝機能の許容する範囲で腫瘍の存在する門脈領域を切除する術式を選択します(解剖学的肝切除)。

肝癌は切除後も肝内再発が多いことが知られています。当院では、再発率低下のために抗ウィルス治療(C型肝炎、B型肝炎)、禁酒(アルコール性肝炎)、生活習慣の改善(脂肪肝、糖尿病)、などに取り組んでいます。

再発の際も毎回アルゴリズムを参考に切除適応を決定し、積極的な再肝切除術を行っています。再肝切除時には癒着が困難となることもあるため、癒着防止材を利用しています。

  • 清水篤志他、【術後晩期合併症の診療方針】肝切除術後の肝不全 消化器外科35巻11号 Page1631-1637(2012.10)
  • Shimizu A, Hasegawa K, Masuda K et al Efficacy of Hyaluronic Acid/Carboxymethyl Cellulose-Based Bioresorbable Membranes in Reducing Perihepatic Adhesion Formation: A Prospective Cohort Study Digestive Surgery (2018) 35(2) 95-103
  • 森一洋他、肝血管腫として経過観察中に急速増大を示した巨大肝細胞癌の1症例 Liver Cancer (1341-1926)24巻 Page45-49(2018.11)
  • 高橋道郎他、 【肝胆膵外科手術におけるトラブルシューティング】肝臓 高度癒着を伴う再手術症例に対する開腹再肝切除術 手術73巻7号 Page991-995(2019.06)

転移性肝癌

肝臓は他臓器の癌が転移することが多く、血行性転移のため通常は原病の進行、全身病であることを表します。しかし、結腸直腸癌の肝転移は切除することで治癒が期待できるため、可能な限り切除することが勧められます。一回切除した後の肝転移再発に対しても、積極的に再切除を行っています。また発見時に切除不能でも、近年進歩の著しい化学療法によって腫瘍が縮小し、切除可能になる患者さんも増えています(術前化学療法)。

  • 高橋道郎他、【肝胆膵癌の血管浸潤をどう治療するか】大腸癌肝転移の門脈・肝静脈・下大静脈浸潤 臨床外科 69巻8号 Page933-937(2014.08)
  • Takahashi M, Hasegawa K, Kokudo N et al Contrast-enhanced intraoperative ultrasonography using perfluorobutane microbubbles for the enumeration of colorectal liver metastases. Br J Surg. 2012 Sep;99(9):1271-7
  • Takahashi M, Saiura A, Takahashi Y. The Usefulness of Patch Repair Using the Repermeabilized Umbilical Vein of the Round Ligament for Hepatobiliary Malignancies. World J Surg. 2017 Nov;41(11):2813-2816.

胆管癌

胆管癌は腫瘍の部位によって術式が異なります。肝臓に近い腫瘍は拡大肝切除、十二指腸に近い腫瘍は膵頭十二指腸切除が適応になります。腫瘍が広範囲に広がっている場合は拡大肝切除+膵頭十二指腸切除が必要になることもあります。腫瘍のステージが進行している場合は術後に再発予防の補助化学療法をすることになります。

胆嚢癌

胆嚢癌は早期発見が困難な癌で転移を来たし易いため発見時に既に進行していることも少なくありません。しかし遠隔転移がなければ切除が勧められます。切除術式は病変の広がり、浸潤によって胆嚢摘出術から肝切除、肝外胆管切除、リンパ節郭清など適宜検討します。進行胆嚢癌の場合は、右肝、尾状葉切除+膵頭十二指腸切除を行うことがあります。早期胆嚢癌うたがいであれば、腹腔鏡下手術による根治術も検討されます。

減黄処置や門脈枝塞栓術について

胆管癌、胆嚢癌では、黄疸肝に対する大量肝切除による術後肝不全のリスクがあります。当科では黄疸症例に対し、消化器内科医師により内視鏡による減黄処置を行っております。また大量肝切除予定症例には、放射線科医師と協力のもと、門脈枝塞栓術を術前に施行し安全性を確保しています。

膵癌

膵癌は従来予後不良な癌の代表でしたが、近年化学療法を取り入れた総合的治療により予後が改善傾向にあります。切除可能な症例には術前化学療法を導入したうえで、積極的に切除を行っております。術後は補助化学療法を行います。膵頭部癌には膵頭十二指腸切除、膵体尾部癌には膵体尾部切除を施行します。根治が目指せる場合、血管合併切除も行っております。
膵管内粘液産生腫瘍(IPMN)は、大きさ、内部隆起、主膵管径などから膵癌の可能性がある場合は、切除適応となります。また、膵内分泌腫瘍(NET)は、小さくても肝転移を来さないうちに切除することが進められています。いずれもガイドラインに則って治療を行っております。このような低悪性度の腫瘍に対しては、腹腔鏡下膵切除も行います。

  •  髙橋道郎 がん研スタイル 癌の標準手術 膵癌・胆道癌 .膵液漏に対する管理、メジカルビュー社、東京,p222-224.

肝胆膵良性疾患の治療方針

胆石症

胆石症の手術適応は胆石発作など臨床症状がある場合と悪性の疑いが否定できない場合があります。無症状で悪性所見のない場合は経過観察となります。治療は胆嚢摘出術が基本です。手術方法は開腹するもの(開腹胆摘)と腹腔鏡によるもの(腹腔鏡下胆嚢摘出術)があります。

肝良性腫瘍:肝嚢胞、肝血管種など

肝嚢胞や肝血管腫は悪性の所見がなく、無症状であれば経過観察が基本となります。但し、大きくなって痛みや不快感など症状がある場合、悪性が否定できない場合は切除適応となります。症候性肝嚢胞には腹腔鏡下天蓋切除術、肝外突出型の血管腫には腹腔鏡下肝切除術など、低侵襲手術を行っております。

膵・胆管合流異常症(総胆管嚢腫)

胆管と膵管が十二指腸に出る前に合流する、先天的な形態異常です。胆管炎、胆嚢炎を起こすこともありますが、問題となるのは胆嚢癌、胆管癌の頻度が高いことです。見つかった場合、その時点で悪性所見がなくても胆嚢摘出術、胆管が膨らんでいる場合(総胆管嚢腫)は肝外胆管切除の適応になります。

当科の取り組み

肝胆膵外科手術における画像支援ナビゲーション

当院では撮影したCT情報から肝臓の3D解析を行い、肝切除のナビゲーションを行っております。肝臓解析結果と肝機能評価から、最も合理的な肝切除術式を検討することで、安全性と根治性の追求が可能になります。
また、臨床研究として3Dプリンターによって立体臓器の作成、VR技術を利用し、手術のシミュレーション、ナビゲーションに活用する試みに取り組んでいます。

3Dナビゲーション 3Dナビゲーション

腹腔鏡を利用した肝胆膵外科手術

当科では肝胆膵外科手術においても腹腔鏡下手術の導入を進めています。腹腔鏡下肝切除、腹腔鏡下膵切除、腹腔鏡下肝嚢胞天蓋切除術など、最新の技術を取り入れ、キズの小さな体に優しい手術に取り組んでいます。また術中ICG蛍光イメージングを積極的に行い、腫瘍の同定などに利用しております。

腹腔鏡下肝切除術

腹腔鏡下肝切除では小さい穴を開けて、機器による操作で肝切除を行います。キズが小さく痛みも少ないため、術後の回復が非常に早いのが特徴です。すべての肝切除に適応できるわけではありませんが、可能な限り取り入れています。また、腹腔鏡を利用し小開腹による腹腔鏡補助下肝切除や、腹腔鏡下用手補助下肝切除も行っています。

腹腔鏡下肝切除

腹腔鏡下膵切除術

腹腔鏡下膵切除は保険収載の術式であり、当院でも積極的に施行しています(図)。腹腔鏡下肝切除と同様、キズが小さく術後の回復が早いことが特徴です。対象疾患は低悪性度腫瘍に加え、膵臓癌にも適応が広がりました。

腹腔鏡下膵体尾部切除術

早期回復プログラム(ERAS; Enhanced Recovery After Surgery)

肝切除後、膵頭十二指腸切除後の早期回復を目指し、クリニカルパスの導入、早期離床の促進、キズの小さな手術、真皮縫合による閉創など、色々な取り組みをしています。早期回復プログラム導入後は、肝切除後に平均7日間で退院となっています。

入院サポートセンター、早期緩和ケアの取り組み

2015年2月より、肝切除・術前サポートを開始しました。また、「がんとわかったときから始まる」早期緩和ケアを導入し、不安なく肝胆膵がんの手術を受けて頂くために、スタッフ一同がサポートしています。

ハイリスク患者への肝胆膵外科手術

当院は全25診療科を有する総合病院であり、高齢者の他、心疾患、呼吸器疾患、腎疾患など慢性成人病を合併するハイリスクの患者様にも、各分野専門医師と連携し、可能な限り癌に対する根治切除ができるよう取り組んでいます。

臨床試験への参加

最新のエビデンス構築に貢献すべく、他施設共同の臨床試験にも参加する体制を整えています。もちろん、参加は任意で、参加の有無で当院における治療に差はありません。

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2019年12月19日 最終更新